柴又散歩|寅さんを知らない主夫が、天丼と亀と草団子に完敗した話

散歩コース・街歩き

どうもこんにちは。お散歩する主夫です。

唐突だが、私は寅さんを見たことがない。

柴又といえば『男はつらいよ』。それは知っている。
それしか知らない。

改札を出ると、駅前に寅さんの銅像が立っていた。

大きなトランクを持って、今にもどこかへ旅立ちそうな顔をしている。
しかし、知らないからこそ楽しめることもある。

私はそんな時、勝手に想像する。
寅さんの声やセリフ、人間性。

「この饅頭、幾つ食べていい?」
「どんなことがあっても笑っていたいと、僕は思うんだ」

全て私の勝手な想像だ。
今回はそんな寅さんを見たことがない私なりに寅さんの聖地「柴又」を歩いた話をする。

柴又散歩のルートと所要時間

今回歩いたルートはこちら。
京成柴又駅 → 大和家(天丼)→ 帝釈天(彫刻ギャラリー)→ 山本亭 → 門前とらや(草団子)→ 京成柴又駅

すべて駅から徒歩圏内。特別な準備は何もいらない。
所要時間は半日。彫刻ギャラリーと山本亭をじっくり見るなら、3〜4時間は確保しておくといい。

ぷらっと歩いてみよう。

大和家|創業140年の天丼が、今まで食べた中で一番うまかった

まず向かったのは、帝釈天参道の入口すぐそばにある「大和家」だ。

創業は明治18年(1885年)。
140年以上続く老舗天丼屋で、参道からありし日の日本を感じさせる看板が見える。

注文したのは天丼の並(1,200円)。

これまで食べた天ぷらと衣が違う。
サクサクしていて、軽い。
まるで衣が空気でできているみたいで、口に入れた瞬間にふわっと消える。
それなのにちゃんと香ばしい。

タレはしっかり甘じょっぱい、上品なのに、どこか親しみやすい。
そして奥には謎のコクを感じる。
「江戸前」という言葉の意味が、なんとなくわかった気がした。

山田洋次監督のサインが飾られていた。
渥美清さんも通い続けた店だという。
その二人が食べ続けた天丼を、寅さんを見たことのない私が食べている。
なんとも図々しい話だが、うまいものはうまい。

大和家 基本情報 住所:東京都葛飾区柴又7-7-4 営業時間:9:00〜17:00(飲食は11:00〜16:00頃) 定休日:不定休 アクセス:京成柴又駅から徒歩約2分

帝釈天|彫刻の亀が、息をしているように見えた

天丼でお腹が満たされた後、参道を進んで帝釈天へ。

正式名称は「経栄山題経寺」。

1629年開創の日蓮宗の寺院だ。
「柴又帝釈天」という呼び名が定着しているが、実は日蓮宗の寺としての本尊は帝釈天ではなく、帝釈堂の隣の祖師堂に安置された大曼荼羅なのだそうだ。
どうでもいい話をするようだが、こういう「実は」という情報を散歩中に拾うのが好きだ。

参拝を済ませて、彫刻ギャラリーへ(拝観料400円で庭園とのセット券)。

入った瞬間、「あれ?普通の寺となんか違う」と思った。

帝釈堂の外壁を、彫刻が埋め尽くしている。

どうやらこれは法華経の10の説話を、10人の宮彫刻師がそれぞれ1面ずつ分担して彫り上げたもので、大正末期から昭和9年まで十数年をかけて完成したらしい。
すべてケヤキの一枚板。幅1.27m、長さ2.27m、厚さ20cmの板を、正面からだけでなく立体的に掘り込まれている。

ガラス張りの回廊の中に保護されていて、目線の高さでじっくり見られる。
仏教の知識がなくても、工芸品として純粋に圧倒される。

中でも忘れられなかったのが、欄干の下部に彫られただ。

甲羅の一枚一枚の継ぎ目。脚の指先の質感。水面から首を伸ばす角度。
眺めているうちに「木彫りの亀」ということを忘れて、なぜかこの亀が息をしているように見えた。
職人が十数年かけて彫り込んだ命が、そこにあった。

帝釈天 彫刻ギャラリー 基本情報 住所:東京都葛飾区柴又7-10-3 拝観料:大人400円(彫刻ギャラリー+庭園セット) 営業時間:9:00〜16:30 アクセス:京成柴又駅から徒歩約3分

邃渓園|彫刻の後に、静かな庭があった

彫刻ギャラリーを抜けた先に、邃渓園(すいけいえん)がある。 彫刻ギャラリーと共通券400円でそのまま入れるので、気づいたら庭の中にいた、という感じだった。

向島の名庭師・永井楽山が手がけた池泉回遊式の庭園で、昭和40年に完成したものだ。
庭の中には入れず、屋根付きの渡り廊下を一周しながら眺める形になっている。

和室には和と歴史を感じさせる美術品があった。

縁側のベンチに座るとさっきまで彫刻の密度に圧倒されていた頭が、すっと静かになった。

涼しかった。

風が通っているわけでもないのに、緑と水がそこにあるだけで、体感温度が下がるような感覚がある。
美しい、という言葉しか出てこない場所だった。

将来、こんな家に住みたい。マジで。

門前とらや|草団子は、団子の部分が主役だった

参道に戻って、最後は「門前とらや」へ。

明治20年(1887年)創業。140年近い歴史をもつ草団子の店で、映画「男はつらいよ」の第1〜4作目では寅さんの実家として撮影に使われた場所でもある。

店内奥に、当時のまま残る階段がある。
寅さんを見たことがない私にとっては、ただの「いい感じの古い階段」だったが。

食べ歩き用の草団子を1本(200円)注文した。

その日についた団子をその日限りで販売しているというこだわりがあるらしく、たしかに団子が柔らかい。 よもぎの香りがしっかりある。青くて、少し土っぽい、あの草の香りだ。

一口食べて気づいたのは、この店の主役はあんこではなく団子のほうだということだ。

つぶあんは甘さ控えめで、むしろ引き立て役に徹している。
もちもちとしたコシのある団子が、よもぎの香りごと口の中に広がる。
あんこがあってよかった、というより、この団子があってよかったと思う。

参道をゆっくり歩きながら食べた。
寅さんを知らなくても、この草団子は美味しい。それは間違いない。

門前とらや 基本情報 住所:東京都葛飾区柴又7-7-5 アクセス:京成柴又駅から徒歩約3分 定休日:不定休

柴又は「若者が普通に楽しめる街」だった

柴又に来る前のイメージは、「寅さんファンの聖地、年配の方が中心の街」だった。

実際に歩いてみると、若いカップルや20代の観光客がかなり多かった。
現代風のスイーツや歴史を感じる和菓子が充実した食べ歩きを手伝ってくれる。
参道の食べ歩きは気軽だし、山本亭はたった100円で本物の日本建築と庭園に触れられる。
帝釈天の彫刻は、寺の文脈を離れても純粋に「凄い工芸品」として通用する。

寅さんを知らなくていい。
天丼を食べて、木彫りの亀に驚いて、縁側でぼんやりして、草団子を食べながら帰る。

それだけで、十分すぎる半日になる。

次回行ってみたいところ

今回は時間の都合で回れなかったが、気になっているスポットがいくつかある。

葛飾柴又寅さん記念館
帝釈天の裏手、江戸川沿いにある博物館だ。実際の撮影に使われた「くるまや」のセットが大船撮影所から移設されていて、映画の中に入れる。入場料500円。寅さんを見たことがない私でも、50作分の気配くらいは感じられそうだと思っている。

矢切の渡し
都内に唯一残る渡し船で、江戸時代初期から続いている。江戸川を渡って対岸の千葉県松戸市まで約5分、片道300円。手漕ぎの船が今も現役というのが信じられない。冬季の平日は運休があるので事前確認が必要だ。

山本亭
帝釈天から徒歩3分、入場料100円の和洋折衷の邸宅。アメリカの日本庭園専門誌で国内3位に選ばれた書院庭園が有名で、縁側でぼんやりお茶を飲めるらしい。邃渓園を見た後だと庭園の見方が少し変わりそうで、それも楽しみだ。

川千家のうなぎ
安永年間(1772年〜)創業の川魚料理の老舗で、映画にも度々登場している。250年続く店のうなぎを食べてみたい。ただし値段はそれなり(うな重・梅4,000円〜)なので、財布と相談してから行く。

まとめ|柴又散歩コース早見表

スポットひとこと料金目安
大和家創業140年の江戸前天丼。タレが別格天丼(並)1,200円
帝釈天 彫刻ギャラリー+邃渓園彫刻の圧倒感と、その後の静けさ400円(庭園込み)
門前とらや当日製造、当日販売の草団子食べ歩き200円

財布とスマホだけ持って、京成線に乗ってほしい。

柴又で降りて、天丼を食べて、亀を見て、縁側で涼んで、団子を食べながら帰る。

なんとなく日本の文化が、少し好きになれる。 そういう散歩だった。

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